- 2020.07.01
- RESEARCH/CONTENTS
コロナ禍におけるシリコンバレー投資動向
コロナ禍でも投資意欲の底力を見せるシリコンバレー
当然避けられないことではあるが、コロナ禍で日本の投資界隈は冷え込みを見せている。ベンチャーエンタープライズセンター(VEC)の投資動向調査によると、2020年Q1(1-3月)のVC及びCVCの投資金額は387億円で前年比19%減、一件あたりの投資額も24%減と報告されている。
一方で、スタートアップ投資の本場と言えるアメリカにおいては必ずしも同じ状況ではないことが伺える。CBINSIGHTSの調査によると、アメリカのTech投資の3大ハブ都市(シリコンバレー、NY、ボストン)における2020年Q1(1-3月)のスタートアップの資金調達件数において前年比で、NYが29%減、ボストンが22%減となっている中、シリコンバレーは4%減と、この状況下において比較的堅調に持ちこたえているといえる。もちろん、これはコロナによる全国的なロックダウン前も含む1-3月のデータなので、全体的に今後の数値においてはよりシビアな減少が表れてくることは間違いないが、それを考慮してもシリコンバレーの投資ハブとしての底力が垣間見ることができる。
コロナ禍におけるシリコンバレースタートアップへの投資トレンド
ここではそんなシリコンバレーにおいて、コロナ禍にもかかわらず資金調達に成功しているスタートアップのトレンドを見ていきたい。以下は2020年3-5月において資金調達を実施しているアーリーステージ(シード、シリーズA)のスタートアップの企業数を業種ごとに比較したものである
AI、Health Care、Biotechnology、Analyticsのトップ4は不動の強さを見せる一方で、2020年は新たにCollaboration、Employment、Customer Serviceといったように新しい形の働き方・事業運営を求められる企業向けのソリューションへの投資が顕著に傾向として表れている結果と言える。また上記の対企業向けソリューションに対して、コロナ禍における対個人向けのGaming分野のスタートアップが複数調達に成功していることも興味深い。
最後に、参考までにスタートアップメディアTechCrunchの考える、コロナを受けて拡大していくとみられる6大マクロトレンドを紹介したい。詳しくは記事を参照されたい。
- Future of work: promoting intimacy and trust
- Healthcare IT: telemedicine and remote patient monitoring
- Robotics and supply chain
- Cybersecurity
- Education = knowledge transfer + social + signaling
- Fintech
また、アメリカのVCやスタートアップとやり取りをする中で、ミクロレベルで確かに生じている投資実務の変化として当事者が言及していることとして以下のようなものがある。
- スタートアップとして潜在投資家に対して、しっかり現在のキャッシュで事業運営していくことのできる道筋を示すことがより一層求められている
- 早期売上創出の肝を握る顧客との契約において、可能な際にはアップフロントでの支払いによる足元でのキャッシュ獲得が重要になってきている
- VCにおいては、新たな投資よりも既存ポートフォリオへの再投資する傾向が強い
強まるコロナを踏まえた投資動向のベクトル
シリコンバレーの位置するカリフォルニア州においては、ロックダウンの段階的解除などに伴い6月後半にきて再びコロナ感染者数が急増しており、6/23は過去最多の7.149人の新たな感染が報告されている。こうした状況を受けてより一層今後の投資動向はこれまで紹介したようなコロナを踏まえたトレンドに左右される可能性が高い。これを通してポストコロナのアメリカ及びその潮流の影響を大きく受けることになる日本の今後の投資動向を考える材料としていただけると幸いである。
執筆者:久米 翔二郎(シニアコンサルタント)